コラーゲンが老化防止にいいってホント?
最近、美容の専門書や医学書などにも、コラーゲンという言葉が登場するようになってきました。ちなみに<現代用語の基礎知識>最新版には「美容」と「健康」、「人体」、「がん」の項目にコラーゲンという言葉がありました。そのコラーゲンのどのような効用が注目されているのでしょうか。コラーゲンの働きをみていく前に、コラーゲンとはどのような物質なのかを簡単に説明します。
コラーゲンの基礎知識
骨付きの肉や、魚を丸ごと煮ると美味しいスープができます。このスープをさらに煮詰めて冷やすとゼリー状の弾力性のある塊になります。これを「煮こごり」と呼んでいますが、生きた体内にあるときはコラーゲンと呼ばれています。
コラーゲンはタンパク質の一種で、人体を構成しているタンパク質の約40%内外を占めている、最も多いタンパク質です。
コラーゲンは構造タンパク質とも呼ばれ、全身に分布して、特に皮膚、骨、歯、軟骨、腱、血管壁などを整え、そのそれぞれの細胞と細胞を結びつけたり、弾力性を持たせたり、骨にカルシウムを補給したり、骨や臓器などの補強や形を正常に支持する働きを果たし、健常な生命活動を行ううえに大変重要なものです。コラーゲンにはI型、II型、III型からXIII型に分類され、各型の分子は3本の同種あるいは異種のポリペプチド鎖からなっています。また、傷が直る立場で、傷口に見られる光沢のある盛り上がりもコラーゲンが主です。
化学的に抽出したゼラチンは膠(にかわ)ともいい、コラーゲンは、繊維上になっているので膠原繊維とも呼ばれ整然と並ぶ性質があり、美容にも関係が深いものです。
コラーゲンの効用1
肌に張力(ハリ)と輝く潤いを取り戻す
肌がトシをとる理由
健康で美しい肌とは、みずみずしく弾力があり、しわや肌荒れが無く、キメ細かく血色の良い状態をいいます。ところが老化に伴い、肌が弾力性を失い、たるんでしわやシミが増え、かさかさに荒れてきます。それはなぜでしょうか。
皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織の三層構造になっていて、表皮はさらに角質層、透明層、顆粒層、有棘層、基底層の五重構造になっています。
私たちが、きれいな肌と言っているのは、角質層をみていっているわけですが、実はこの角質層の細胞はほとんど生きてはいません。基底層で生み出された細胞が押し出されて生命を失い、層状に重なっているだけなのです。いずれ最後はアカ(垢)となって剥がれ落ちるものですが、ただ水分を吸収・保持する力が強く、角質層が十分に水分(湿気)を保っていると、肌はみずみずしく見えます。
この角質層には内部から常に水分が補給されていますが、水のままだとすぐに蒸発してしまいます。
そこで皮脂腺から分泌された脂質と混ぜ合わせる必要があるのですが、水と脂はそのままでは混じり合いません。この時、水と脂をうまく混ぜ合わせる乳化剤の働きをしているのがレシチン、コレステロール、ワックスなどの脂質と体内新陳代謝とのバランスです。
若々しさを保つ鍵は真皮
しかし、年をとってくると水分の補給も皮脂の分泌も衰え、肌の水分量も減ってきます。そこで、人工的に水や脂を混ぜ合わせたクリームという化粧品が考えられ、乳化剤としてコラーゲンが使われるようになりました。
ただ、化粧品が作用を及ぼすのはせいぜい角質層だけで、真皮層にまでは到達しないと言われています。
重要なのはこの真皮層で、真皮層が若く弾力性があればシワやたるみはできませんし、基底層にも十分な水分、脂質と共に、栄養が補給できます。
そして、真皮層の大部分(約70%)を占めているのが膠原繊維であるコラーゲンで、弾力繊維であるエラスチンなどと共に、肌に張りや弾力性を与えて健康美を示すのです。
コラーゲンが十分に補給されなかったり、老化して固くなると、最上層の角質層にまで影響がおよび、美しさが失われることになります。しなやかで、水分もたっぷり保った皮膚のコラーゲンは、その繊維状態を維持できなくなり、断裂して細かく切れ、水分も、弾力性も失ってしまいます。これが肌の表面にシワやタルミとなって現れてくるのです。
肌の手入れよりも、まず・・・
例えば、リンゴを冷蔵に何日も入れておくと、しぼむように皮にシワができてきます。食べると中身はスカスカで水気もなくなっています。そんなリンゴの皮に、いくら水を吹きかけても、油をぬっても、できたシワをのばすことはできません。これと同じようなことが皮膚の下でも起こっているのです。
だから肌を若々しく美しく保つには基礎化粧を考えることも大切ですが、老化に伴い減少してくるコラーゲンを、いかに補給するかがより必要になってきます。健康と美容のためには、食事や運動等全般に気をつけて全身の活力を保つことが肌にとっても必要なことです。便秘や寝不足になるとてきめんに肌が荒れるのは誰でも体験済みのことと思いますが、肌は全身の健康を写す鏡でもあるのです。食品としてのコラーゲンも市販されていますので、これを活用するのも良いでしょう。
コラーゲンの効用2
骨粗しょう症の予防にも
20代〜30代もご用心
骨は一見、無機質のようにみえますが、常にカルシウムを吸収したり放出したりしている新陳代謝の活発な器官です。
ところが、老化にともない、骨からカルシウムが溶け出し、骨がスカスカになってきます。これが骨粗しょう症という病気で、骨折を起こしやすくなり、寝たきりの原因の第2位(第1位は脳卒中)に上げられています。特に閉経後の60歳以上の女性に多くなりましたが、最近ではさらに20代や30代の女性にまでも多く見られるようになってきました。それではカルシウムさえ十分に摂っていればいいかというと、それだけでは不十分です。実は骨も20〜30%はコラーゲンでできていて、コラーゲンがビタミンDやビタミンAと協力してカルシウムをしっかりと捕まえているのです。
切っても切れないコラーゲンとカルシウム
骨を鉄筋コンクリートに例えると、コラーゲンが鉄筋、カルシウムがコンクリートで、ビタミンDやAと協力して、日光にも当たらないと丈夫な構造物にはならないのです。ただし、コラーゲンがしっかりとカルシウムを捕まえ、しっかりした骨を作るには、骨に力(負荷)をかける運動も必要です。無重力状態の宇宙に長期間いた宇宙飛行士が、いくらタンパク質やカルシウムを摂っていても骨が弱くなってしまったということがあります。コラーゲンは、バランスの良い栄養と適度な運動によって新陳代謝が活発になり、カルシウムをしっかり捕まえることができます。ですから、カルシウムを毎日の必要量だけはしっかり摂り、コラーゲンを補給し、日光浴をしながら無理しない程度の運動を続けることが、骨粗しょう症の予防にもつながります。さらに、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを、忘れずに服用して、毎日30分程度の屋外散歩(日光浴)を続けることも大切です。
コラーゲンの効用3
新陳代謝を促進して、全身を若く健康的に・・・
コラーゲンは、皮膚や骨ばかりではなく、全身のあらゆるところに存在します。例えば、歯は象牙質の20%がコラーゲンですし、関節部分の軟骨や、骨と筋肉をつなぐ腱、歯茎、目の角膜や結膜、胃腸、心臓、肝臓、肺などの内臓、そして血管、毛根にまで、コラーゲンは含まれています。
疾病の予防や治療に大きな期待
このように、全身に分布するコラーゲンは現在13種類以上あることが知られていて、種類によって、また器官や臓器によっては働きも違うと考えられています。老眼になったり、関節が痛んだり、歯茎がもろくなったり、白髪や抜け毛が増えたりするなど、老化現象といわれる諸症状は、まさにコラーゲンの新陳代謝が衰えてきたことの現れであるといえます。ということは、新陳代謝を活性化すれば、老化現象を遅らせることも可能になり、からだの細胞を若々しく保つことができ、さまざまな病気の予防にもつながあると言えます。
コラーゲンには白血球に活力を与えて免疫機能を高めるというデータ(京都大学医用高分子研究センター調べ)があり、アレルギー体質の改善にも役立つといわれています。また、ドイツやフランスにも飲むコラーゲンが、関節炎やリウマチの治療薬として有効に使われています。この他さまざまな疾病の予防や治療にも大きな効果が期待されているように、コラーゲンは私たちの全身の健康を維持し、老化防止に大切な役目を持っているのです。